STORY TELLER

 レオンハルトとは剣才に恵まれた男である。
 レオンハルトとはそこにいるだけで皆に力を与える男である。
 レオンハルトとは、英雄になるべくして生まれた男である。
 それを、望む望まずに関わらず――

「聞け! これが最後の戦いである!」
 彼方まで広がる全軍へ轟くレオンハルトの声に、僅かに緊張が走る。
 だが、気づけた者はいなかった。
 ほんの微か、諦めに似た投げやりさが滲んだその声の意味に。

 それは、いつかの記憶――
「僕の特等席へようこそ、お嬢さん?」
「ふふ、エルフにお嬢さんだなんて言えるの、レオくらいよ?」
「女性の年齢を考えるのは失礼にあたるだろ?」
 星降る丘を背景に、おどけた調子で大仰に両手を広げたレオンハルトはやけに絵になる。
「私、生まれたばかりのレオを抱いたこともあるのだけど?」
 幼いときはもう少し可愛げがあったと睨むアウラに、流石のレオンハルトも少し困ったように眉を下げた。
「あぁー……母さんにお嬢さんって言うようなものか……」
「どちらかって言うとお婆ちゃんに近いかしら?」
 返す言葉もなかったのか降参とばかりに両手を上げると、レオンハルトは星に目を戻した。
 アウラも何も言わず、レオンハルトの隣に腰かける。
 戦火広がる世界とは思えないほど静かで心地よい時間は、いっそ時が止まってしまったかと思うほどで。
「……本当はさ」
 さっきまでの軽口ではない。それは絞り出すかのように、せき止めていた何かが溢れる様に、レオの口から零れた。
「……戦わなくて済むならそれに越したことはないと思わないか?」
 いっそ、ではない。
 このまま本当に時が止まってくれと、どれほど強く願ったか。
「あら、そんなことをレオが言っていいの?」
「勘弁してくれよアウラ。まだ僕は王様でも何でもないんだ」
 二人きりのその世界で零した言葉は明日、英雄王の跡を継ぐ男の言葉ではない。
 自分をエルフの森の外へ連れ出した男のそんな泣き言に、アウラはそれでも優しく微笑んだ。
「皆を死なせたくないから戦ってきた。そしたら前の隊長が死んで、その次の隊長も死んで、僕にその席が回ってきてさ。あぁー僕の番かって」
 それはあっけらかんとした口調で。きっと、それでも良かったのだろう。
 皆を守ることができるのならそれでも。
 だが、現実は。
「でもレオはまだ生きてるわ?」
「……死ぬべきだった」
 怨嗟の声だった。生きていることを唾棄するような苦痛の声に、アウラは目を伏せた。
「ねぇ、アウラ。僕を守るために何人死んだ? お前は生きるべきだって。お前を失うわけにいかないって。そんな言葉に生かされて、何人が僕のせいで死んだんだ」
 静かな後悔に、かける言葉が見つからない。
 ヒューマンという種族は既に限界だった。
 仮初の平穏が、初代英雄王の怒り火に包まれて50余年。デーモンの奴隷を脱却するための戦いはもはや世界を巻き込み、あらゆる種族が血を流している。
「皆さ、僕の前では笑うんだよ……笑って、死ぬんだ」
「レオは皆の希望、だから」
「僕は戦いたくなんてなかったのにな」
 一手でも間違えれば瓦解するヒューマンの戦線を支えるためには、英雄の血では足りない、一騎当千の武力だけでは足りない、戦場をかき回し生き残る知恵だけでは足りない。
 だが、皮肉なことにレオンハルトにはあったのだ。
 そんなヒューマンに希望を持たせるだけの、才能も、カリスマも。
 誰よりも戦いを拒んだレオンハルトに与えられたのは、戦うための才能だった。
「もう少しよ。あと少し、戦えば……」
「戦って何だい? エルフは協力してくれた。ドワーフはどうやら仲間になってはくれないようだ。デーモンは相変わらず強すぎる。僕は英雄王とやらに選ばれ、そんな世界で皆を守らなきゃいけない」
 血でも吐くようなその言葉に乗るのは責任感と、恐怖。
「だけど皆もう限界だ。エルフの協力があっても、戦える回数はそう多くない。それでも僕は皆に死ねと言わなくちゃならないんだよ」
「だからこそ、勝たなくちゃならない。そうでしょ?」
「誰が生きてるんだよ、その世界」
 勝てる。かもしれない。
 だけどその時世界には誰が残っているのか。
 誰のために、戦えばいいのか。
「初代は言ったそうだよ。俺のために死んでくれと。そして多くがその命令のもと死んでいった……僕には分からないよ……」
 分からなくても、王になるしかない。
 アウラはそっと、レオンハルトの頭を抱き寄せることしか、できなかった。

 あれからずっと、隣に居る誰かを守るために戦ってきた。
 王として担ぎあげられなお、その想いは変わらない。
 ヒューマンの存亡をかけて、などと掲げてはいるが、レオンハルトの心中は、あの日アウラに零した弱音から進めてはいない。
 それでも戦うしかなかった。
 幾度かの戦火を越え、敗戦と撤退を繰り返し今。レオンハルトの後ろに控えるのは、ヒューマンの全軍。
 レオンハルトが家族と呼ぶ皆が、そこに居る。
「珍しい、緊張しているの?」
 アウラは少しおどけた様子で笑いながら、自らの馬をレオンハルトの隣へ並べた。
「そりゃ緊張もするさ」
 馬上で首を竦めて笑い返す。その柔らかで、しかし力強い笑みは、アウラの心にかつての英雄王たちを思い出させた。
 ずっと見てきた。
 初代は森を出て共に戦ってくれと叫び、二代目には森に残り幸せになってくれと諭された。その永き命をもって、彼らの歩む道を見てきた。そして今代の王レオンハルトは、道は自らで選ぶべきだと笑った。
 王としての道しかなかったレオンハルトのその笑みは、ひどくアウラの心に残った。燻っていた諦観と羨望がアウラを焦がし、そして三代に渡った熱意は、とうとうアウラに、エルフたちに馬を並べることを選ばせた。
「ここまで来たら気負っても仕方ないよ」
「そう思えたなら、楽になれるんだろうけどな。今の俺の背中に居るのは、ヒューマンの全てだ」
「……ごめん」
 頭を下げたアウラに、レオンハルトは何でもないように肩を竦めた。
「いいさ、それが契約だ」
 チャンスは今代、今回まで。失敗すれば、エルフが森を出ることは二度と、ない。
「……後方のドワーフは必ず抑える」
 それがエルフが戦場にでるための契約だった。いたずらに数を減らしたくないエルフ軍は、後方支援。デーモンとの戦線に立たない。相性的に有利なドワーフ軍を抑える形での支援になる。
 それでも、後方を気にせず戦えるメリットは大きい。何より、ドワーフ、デーモン両種族の強靭な肉体を持って迫られるのは、種族として身体の強くないヒューマンにとって相性があまり良くない。
 だからこそ。
「頼んだ」
 出なければ、戦線はあっという間に瓦解するだろう。
 そんな状況であっても、浮かんだのはずんぐりむっくりした身体を不機嫌に揺らした友の顔。ドワーフにあってなお、自らに剣を打ってくれた友の命を願いながら。
「勝とうね」
 真っ直ぐ前を見つめるアウラの瞳に迷いはない。
 広がるのは、強大なデーモン軍。勝つしかないのだ。既に、戦線は引き返せないところにあるのだから。
「アウラが居てくれるなら楽勝だよ」
 ゆえに笑う。
「軽口が、レオらしいね」
 ゆえに笑い返す。
「……始めようか」
「……そうだね」
 退路はない。
 二人は馬を返し、陽に煌めく鎧の軍団を見やる。どの顔にも、覚悟が浮かぶ。だが同時に、疲労が拭いきれない。
 勝っても負けても、ここが限界であろう。
 レオンハルトはプレッシャーに微かなため息を零し、しかしすぐに気を引き締め直した。

「聞け! これが最後の戦いである!」

 遠くに響くその声は、全員の姿勢を正した。浮かぶ表情はそれぞれだ。
 安堵、希望、諦観、絶望。全てを飲み込み、鼓舞する。
「これまでよくついて来てくれた。幾たびの敗戦、お前たちの仲間を守ってやれなかったことを申し訳なく思う」
 何人も殺してきた。見捨ててきた。そのたびに血を吐くような想いを誰にぶつけることもできず、それでもと立ち上がってきた。
「だが、逃げるだけの世界は今日で終わりだ」
 もう、逃げない。
 終わらせるのだ。
「ドワーフはいない。デーモンの大半も、力を落としている! 今だ! 俺たちが未来を掴むためにはここにしかない!」
 奴隷の日々をここで、捨てるために。
 いつかの子どもたちを守るために。
「いいか、覚悟を決めろ。そして、生きろ。死ぬな。皆が繋いできた世界の夜明けを、その目で拝め! 俺がお前たちをそこまで連れて行ってやる!」
 歓声。
 夜明けへの希望。それはもうそこにある。戦う意思は、覚悟は、とうに決まっている。 
「格好良かったよ」
「それは何よりだ」
 小声で茶化すアウラに、澄ました顔で流して見せた。
 そして。
 ――始まる。
「全軍、突撃ィィィィィ!」
「皆、死なないで!」
 アウラの守護魔法が全軍へ。それでも分が悪い。なればこそ、倒さねばならない。
「……俺たちも行こう」
「……そうだね」
 デーモンをまとめる王を……魔王を落とす。それが勝利条件であった。

「……まったく、森の臆病者と、奴隷ごときがここまで来るとは思わなかった。素直に賞賛しようじゃないか、地を這う弱者ども」
 悠然と立つその男。圧倒的な自信と、それを裏打ちする実力。流れるのは強者の風格。
 ただ一人の部下をつけることもなく、二人の前に立つそれは、油断などではないのだろう。
「敗北した方が弱者だろ?」
 レオンハルトは肩を竦め剣を抜き。
「そして勝つのは私たち」
 アウラは油断なく弓を構えた。
 そして間髪入れず飛ぶのは三本の矢。目にも止まらぬ速度でつがえ放たれたそれに、魔王はゆるりと首を振る。
「森に隠れ潜んで生きてきた臆病者はどうも、現実が見えていないようだ」
 放たれるのは火の魔法。
 魔法を得意とするエルフにすら迫るその魔法の威力は、あっさりと矢を飲み込み、アウラへと襲い掛かる。
「キャッ!?」
「大丈夫か!」
「お前も余所見だ」
 打ち合うは剣と剣。片手で振られた雑な剣を、レオンハルトは歯を食いしばり必死に受けた。
「ぐぅ……っ!」
「確かに英雄を継がされるだけの技量はある……エルフの協力があるとは言え、貴様の力はかつての英雄を遥かに超えるだろう……」
 防戦一方なレオンハルトに対し、愉快気に笑う。
「だがそれだけ。所詮はヒューマンだ」
 振りぬかれた剣に押し切られ、無理やり距離を取らされる。
「そして、精霊に愛されながらもその光を生かしきれない未熟者のエルフ」
 嘲笑うようにアウラの魔法を魔法にて打ち消し、悠然と歩を進める。
「たった二人。その戦力でどうやって私に勝つ気だ?」
 内心歯噛みする二人を呆れたように見ながら、戯れとばかりに魔法を投げつけた。その威力ですら、アウラの魔法を越える。
 だが、そんなことは初めから分かっているのだ。
 強いから諦める、などと言うのなら。最初から立ち上がりなどしない。
 だからこそ、笑って見せた。
「この剣があれば十分だろ」
 友のためにと、たった一人のドワーフに打たれたその剣。
 決して折れず、レオンハルトの全てを受け止めるその力の名を、覇天。デーモンが世界を握る現状に置いて、天すら下すために打たれた剣。
 それが、一人でないのだと背中を押してくれるのだ。ここで折れるなと、諦めるなと、支えてくれる。
「軽口を」
「それだけ余裕があるの」
 つがえ放つは三連射。命には届かずとも、レオンハルトへの攻撃の牽制にはなる。
「死ぬ気で来なければ……」
「勝手に終わらせてくれるなよ。こんなダンス、二度と踊れないぜ?」
 あくまで軽口。
 その心情がどうであれ。
「くはは! なるほど、私相手に余興気分か」
「自由を手に入れるまでの、余興だよ」
 勝って終わる。
 勝ってみせる。
 こんなところで、終われない。
「流石は何万と同胞を殺してきた愚鈍なる王の跡を継ぐ者よ」
 一度、二度、三度、打ち合うたびに痺れる手が、何度も剣を取り落としそうになる。
「……」
「抗わなければ死なずに済んだ命がどれほどあった?」
 デーモンたちの奴隷でいれば、生きていられた命。
 死んでいった家族の顔。
 笑って逝った仲間の顔。
 砕けるほどに、歯を食いしばる。
「生きる希望もない、死ぬために生まれる世界を受け入れろとでも言うのか!」
 吠える声こそ力だ。魔王の剣を押し返し、自らの剣に魂を乗せる。弱者の小さな反撃を、魔王が嘲笑う。
「それが弱者の生き方だ」
 命を賭した反撃は、それでもなお、魔王の命まで届かない。
「エルフを見よ」
 魔王は高らかに。
「自らの世界に引きこもり、命の終りを待つばかりのこの臆病者どもを」
 自ら以外を弱者と。自分たちのための世界であると。
「エルフたちがいなければ命の循環がどうなるか、分からないわけじゃないだろう!」
 そう、世界に不要なものなどない。デーモンでさえ。
 ドワーフがいなければ発展はなく、エルフがいなければ調和はなく、デーモンの絶望があるからこそ、ヒューマンの可能性が花開く。
「ゆえに必要な数は生かしておいてやろう」
「……どこまでも傲慢な」
「我らは勝者だ。そして世界を動かすのは勝者の権利だ」
 自らの権利を高らかに。それが己の物であることを疑いもしない。
 そう、この世界においてデーモンとは確かに強者である。
 そしてその頂点たる魔王は、単騎最強とすら言える。
「……否定はしないさ」
 だからこそ、魔王にとってそれは意外な肯定であった。魔王にとってその宣言は、自らにひれ伏すとの宣言に等しい。
「ほう?」
 たった二人で目の前に立ちはだかる壁となったその存在が、今更諦めるとは思えない。
 そこでようやく、思い至る。
 二人?
 負けられない戦いに、勝てるかどうか分からない人数で挑む。そんな馬鹿なことがあるのか、と。
「その理屈を持って、今からお前を殺すんだから」
「……お待たせ」
 練り上げたのは魔法。
 今更、などではない。
 もう、二人ではない。
「待たせたな、魔王。とっておきだ」
 天より降り注ぐ、暖かな魔法の光。
 儀式魔法【降り注ぐ女神の慈愛】
 森に残るエルフたちによるその禁断の魔法は、身体能力を大幅に向上させる。その光が、頼りない牙を、魔王の命へ届きうる一振りの剣へと変える。
 本当なら、完成させてから挑みたかった。だが、魔王を戦場に出すわけにはいかなかった。
 だからこその賭け。
 時間との勝負に勝ったのは、他の誰でもない、ヒューマンという最も弱き者。
「半端者どもが……!」
「皆が命をかけてる……だから……!」
 さらに重ねる、禁断の力。
「極炎穿ツ王ノ義務」
 英雄にのみ受け継がれる、口伝スキル。身体が壊れぬようにかけられたリミッターを強制的に壊す力。
 更に膨れ上がる膨大な力の本流は、魔王をして一歩後ずさらせる。
「……愚かな」
 無理やりに身体能力を向上させるのだ。この戦いが終わって、生きていられるだろうか。
 不安を、渇望で塗り潰す。
 覚悟で、奮い立たせる。
 ここが、分水嶺。
「何とでも言えばいい、これが俺たちヒューマンの覚悟だ!」
 人の限界に迫る速さ、そして打ち合い。打ち勝つのは、たかがヒューマン。
「おのれ! おのれぇぇぇぇぇ!」
 魔王の手が、追いつかない。
 切り結び、離れようにも退路を切るのは嘲笑ったエルフの弓。
 弱者たちの、一撃。
 そして、彼らは待っていた。たった一度の、一瞬の。
「う……ぐ……」
 脚を掠めた矢に意識を取られた、瞬きよりも短い致命の隙を、今は見逃さない。
「油断してくれて、ありがとよ」
 突き立つ牙は、覇天。
 自らの身体から零れ落ちる命を忌々しそうに、しかしそれでも魔王は嗤う。
「ふ……フハハハハハ……やはり、お前は愚かな王だよ」
「……負け惜しみかよ」
 死に行く者の最後とは思えない哄笑に、眉を顰める。
「地獄で会おう」
 魔王は楽し気に、目を閉じた。
 何かを予期させる一言が不気味だった。
 だが、これで終わりだ。
 自由を勝ち取り――
「がっ……!?」
 レオンハルトに突き立てられたのは、三本の矢。
 それは、背中を任せたはずの。
「……ごめんね」
 聴きなれた声は、今は泣きそうで。
「ヒューマンの可能性は危険すぎます」
 どこからともなく現れたのは後方指示を任せていたはずの、アウラの副官たち。
 ようやく思い至る。魔王は、死の間際に彼女たちに気付いたのだと。
 その殺意の向く先が己ではないことに。
「彼らはデーモンに成り代わる可能性があった」
 可能性の話だ。
「あるいはドワーフすら超えるような貪欲な獣に」
 可能性の話だ。
「……私たちの友となれる可能性だって」
 友だと思っていたのは。
「世界の調停者として、その可能性を信じることはできません」
「くそ……なん、で……」
 魔王に覆いかぶさるように、身体が崩れ落ちる。
 今輪に浮かぶのは、勝利を信じ、死地へと走ってくれた仲間の顔。
「これが私たちの役目です」
 世界が揺らぐ。
「世界の調停を望むものとして」
 思考が止まる。
「私たちが……」

 霧崎と文乃が帰った教室で、矢崎と宇野は気の抜けたため息を零した。
「どうだったと思う?」
「まさか文乃が勝つとは思わなかったが……ゲームとしては上々だった。と言うべきじゃないか?」
「だよな」
 盤上遊戯部三作目【STORY TELLER】
 そのテストプレイと二人からの感想を貰った今、肩の荷が下りた気分の二人は安心からか普段ほどの覇気はない。
「遊ぶ人の数だけストーリーを! 何度でも遊べるボードゲーム!」
「言うのは簡単だが、自由度をあげるとここまで調整に地獄を見るとはな……」
「これでもやりたいこと結構削ってるんだもんな……ゲームを作る人はすげぇよ……」
「だがひとまず完成だ」
「そうだな」
 何度目かのため息。次のアイデアもあるが、少し休みたい。それは二人の共通認識のようだ。
「晩飯くらい奢ろうじゃないか?」
「お、魔王様直々に?」
「部下のねぎらいは王の義務だからな」
 先のキャラ設定を引っ張ってくる宇野に、矢崎は引きつった笑みを零しつつもしっかりと便乗する。
「よっしゃ、じゃあ特製ラーメンで」
「あ、お前! ここぞとばかりに高いやつを……!」
 教室に笑い声が響く。
 それは誰もが望んだ平和の。

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